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コックピット日記
No.11 運行乗務員の“机”

 以前、友人からこんなことを言われた経験があります。

 「名刺に書かれている電話番号にかけたけど、君につながらないじゃないか」

 会社勤めをされている方や、ご自身で事業をされている方でしたら、それぞれ自分の机と電話があり、そこで連絡を取れるのが当たり前ですから、きっと友人もそう思ったのでしょう。しかし、私たち運航乗務員の場合、主な職場は「空の上」です。ですから、決まった机を持っていないのが一般的ですし、電話もなかなかつながらないことがあります。

 また、よく人から尋ねられて答えに困るのが、「何時ごろ、出勤するのですか」という質問です。

 飛行機は世界中の空を、24時間飛んでいて、私の勤務時間は搭乗する飛行機によって決まります。空港内に毎日、朝から夕方までいて、担当の飛行機になったら操縦するというのではなく、予め決められたスケジュールに合わせて、空港へ出勤しているのです。

 私の操縦するB767では、国内線に乗務する場合、出発時間の1時間10分前までに集合することが決められています。そして、空港へはかなり余裕をもって出勤しています。

 空港に到着して最初に行う仕事は、連絡事項や飛行ルートなどについての確認です。飛行機の運航に関するマニュアルは日々、新しい内容に変更されるので、それらを細かくチェックします。また、これから自分が操縦する飛行ルートについて、すでに運航を終えた機長が書いたレポートを読み、運航の準備を整えます。

 そして、集合時間になると、空港内にあるディスパッチ・ルームへ移動します。羽田空港を例にとると、大きなテーブルがいくつか並べられていて、天井から「北海道」「関西」「九州」といった具合に、地域別のプラカードが下がっています。地域ごとに分かれた各テーブルには、フライトに必要な資料がすべて揃えられており、ここで機長はディスパッチャー(運航管理者)とブリーフィングを行い、相方合意の上で飛行計画書にサインをします。その後、機内へと乗り込みます。

 B767は現在、国内線の各方面と、中国や韓国、ベトナムなどの国際線でも運航を行っています。座る回数と時間を考えると、操縦席こそ私たち運航乗務員の“机”といえるのではないでしょうか。
文=指方浩之(JALグループB767機長)
Text by Hiroyuki Sashikata

日本航空機内誌・JALカード会員誌「Agora」連載 「コックピット日記」2004年2月号より転載

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